2017年08月08日
1974年の同窓会

携帯電話に見知らぬ番号。
「はい・・・」
「成原さんの携帯ですか?」
「そうですけど・・・」
「私、みなみ、と言いまして・・・覚えていますか?山王小学校のとき、同じクラスだったのですけど・・・」
「えっと・・・みなみさん?」
「はい」
俺は、記憶の断片をかき集めてみた。
『みなみ』・・・確か、漫画タッチのヒロインは『ミナミ』だった気がするが、タッチについては、今は関係ない。
あと・・・・思い当たる『みなみ』が、思い浮かばない。
だいたいにおいて、俺が小学生だった頃、『ミナミ』なんて言う、洒落た名前の子がいたっけ?
昭和40年代は、よしこ、とか、けいこ、とか、ようこ、というのがスタンダードだったし・・・。
「結婚して苗字が変わって、今は、みなみ、では、ないのですが・・・」
ってことは、苗字がみなみ?・・・「思い出した・・・・みなみ**子さん?」
「そうです。覚えていてくれて、良かったです。成原さん、お忙しいのにごめんなさい。突然に」
「いえいえ、非常に懐かしく、恐縮します」
と、そんな感じで、やり取りは始まった。
彼女の依頼はこうだ。
山王小学校1974年卒業の6年4組同窓会が開きたいのだけれど、ずいぶん前に、結婚して違う町にいるために、とりまとめられない。で、俺に、その役をやってもらえないだろうか?
多くの場合、この手の依頼は、面倒であり、労力を要することであり、クラス全員がいい奴とは限らないから、ケチをつけられる可能性も大きい。
つまりは、低調に、お断りするべきなのだろう。
俺は、会話の中で、『お断りをするための台詞』を探していた。
「・・・今、私の町の近くに、あの子とあの子が住んでいて、たまに会って、同窓会やりたいねってお話するんですよ。成原さんは、誰かに会いますか?」
「・・たまに、ですけど、あいつと、あいつくらいは、ラインでつながっていますよ」
「え、ほんとに、今はどんな風に?」
「基本的には、変わってないですよ、彼ら」
「そうなんだ」
と、そんな会話をするうちに、『懐かしさのギア』、が、入った感じがする。
ガチッと、ギアが入っちゃったのかな?
もっとカッコよく言うならば・・・1974年のドアを開けてしまった・・・・かな?
12歳の記憶が、少しずつ、戻ってくる。
「・・・僕らの世代は、今、やっておかないと、死んじゃうかもしれないし・・・前向きに、相談してみましょうか」
などと、言ってしまう俺。
いつもの悪い癖だ。
その場のノリで、いいかっこをしてしまう。
そして、その後、訪れるであろう、『やっかいな状況』に・・・・やんなきゃよかった、と、後悔するくせに。
まったく12歳から成長の兆しは皆無だ。
「みなみさんは、高山に、お盆には帰られるのですか?」
「はい、帰ります」
「では、そのときに、相談しましょう。僕の仕事場でもいいですか?コーヒーくらいは出します」
「ありがとうございます」
と、そんな感じで、電話は終わった。
俺は、もう一度、記憶の断片をかき集めてみた。
1974年。
今から、実に、43年前だ。
長嶋が引退した年だ。
ユリゲラーがスプーンをたくさん曲げていた年だ。
ブルースリーは、まだ、生きていたのだろうか?
TVでは、ドリフターズ、フィンガーファイブ、天地真理、南沙織ってとこかな。
オイルショックの翌年、ロッキード事件が明るみに出だした年・・・1974年。
遠い遠い昔。
そんな時代に、小学生だった、俺達。
山王小学校の6年4組という、コミュニケーションスペースで、俺達はどんなふうだったのだろうか?
みなみさんを、思い浮かべてみた。
『小さな女の子』だった。
それは、まちがえない。
顔や表情は、申し訳ないけど、思い出せない。
もし、実現すれば、悪くないかもしれないな・・・。
彼女と繋がったラインに、みんなの名簿が送られてきた。
彼女なりに調べた情報も、組み込まれている名簿だ。
こりゃ、本気やな。
まずは、お盆に会ってみて、協力者を探そう。
その前に・・・43年ぶりに会って、わかるのか?
だって、初老、だしさ・・・。
出会いを大切に・・・・ちょっと、センチメンタルな、ノスタルジーあふれる展開になれば・・・うれしいけどね。
成原。
Posted by LOSSTA at 13:39│Comments(0)
│成原